2026.06.13 確定申告後の救済制度 『更正の請求について』 確定申告を終えた後に、「医療費控除を申告し忘れていた」「売上を誤って二重計上していた」など、申告内容の誤りに気付くことは少なくありません。このような場合でも、一定の要件を満たせば申告内容を訂正し、納め過ぎた税金の還付を受けることができます。この手続きを「更正の請求」といいます。 申告内容の誤りを訂正する手続きには、「更正の請求」と「修正申告」があります。更正の請求は、税金を多く納めていた場合に、税務署へ還付を求める手続きです。一方、修正申告は、申告漏れなどにより税金を少なく申告していた場合に、不足額を追加で申告・納付する手続きとなります。更正の請求は税額の減額や還付を伴うため、自動的に認められるものではなく、税務署による審査を経て認められた場合に還付が行われます。 なお、更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。例えば、令和7年分の所得税の確定申告については、令和13年3月16日まで更正の請求を行うことができます。そのため、数年前の申告内容に誤りがあった場合でも、期限内であれば訂正して納め過ぎた税金の還付を受けられる可能性があります。 更正の請求を行う際には、領収書や控除証明書、帳簿の写しなど、誤りの内容を客観的に証明できる資料を準備する必要があります。また、更正の請求を行っている間であっても、当初の申告に基づく納税義務は継続します。原則として、一度は申告どおりに納税したうえで、後日還付を受けることになります。 更正の請求は便利な制度ですが、すべての場合に利用できるわけではありません。 例えば、請求期限である5年を経過している場合はや、住宅ローン控除や居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除など、一部の制度には「当初申告要件」が設けられており、後から更正の請求によって適用を受けることができない場合があります。 このように更正の請求は、請求期限や適用要件の判定など、専門的な判断が必要となる場面も少なくありません。過去の申告内容に不安がある場合や、適用できる控除・特例を見落としている可能性がある場合には、早めに内容を確認することが大切です。 また、更正の請求は万能な制度ではなく、上述のように期限や要件を満たしていない場合には利用できないケースもあります。しかし、そのような場合であっても、内容によっては救済が認められる可能性があります。この点については、また別の機会にご紹介したいと思います。 当事務所では、更正の請求や修正申告に関するご相談も承っております。気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2026.05.26 税務調査における留意点 『税務調査で最も恐ろしい重加算税のペナルティと防衛策』 税務調査による追徴課税の中でも、特に注意すべきものが「重加算税」です。通常の計算ミスなどによる申告漏れであれば、追加の税負担は10%~15%程度にとどまりますが、「事実の隠蔽」や「仮装」があったと判断された場合には、35%~40%の重加算税が課されることとなり、企業経営への影響も大きくなります。本稿では、重加算税の主なリスクと、会社を守るための基本的な対策について簡潔にご説明します。 税務署が重加算税を課す際の判断基準は、「意図的に隠そうとした事実があるかどうか」にあります。特に、以下のような行為は重加算税の対象として指摘されやすい代表例です。 ■ 売上除外 現金売上などを帳簿に計上せず、通帳にも入金しないなどして隠す行為です。反面調査等により発覚するケースが多く見られます。 ■ 期ズレ 当期の利益を圧縮する目的で、請求書の日付を操作し、売上を翌期へ繰り延べる行為です。 ■ 架空経費の計上 実体のない親族への給与や外注費の計上、あるいは個人的な支出を会社経費として処理する行為です。 重加算税は、単なる追加納税にとどまらず、その後の会社経営にも大きな影響を及ぼします。 ■ 経済的負担の増大 重加算税(35%~40%)に加え、延滞税も課されるため、資金繰りへの影響が大きくなります。 ■ 税務調査の頻度増加 要注意先として認識されることで、その後の税務調査の頻度が高まります。 ■ 金融機関からの信用低下 申告内容の信頼性が低下することで、金融機関の融資審査において不利に働く場合があります。 これらのリスクを未然に防ぐためには、以下の対応が重要です。 ■ 適正な会計処理の徹底 重加算税は、「意図的な隠蔽や仮装」がある場合に課されるものであり、単純な入力ミスや判断誤りまで直ちに対象となるわけではありません。そのため、日頃から適正な会計処理を心掛けるとともに、領収書や契約書などの証拠書類(エビデンス)を適切に整備しておくことが重要です。また、判断に迷う取引については、自己判断で処理せず、事前に専門家へ相談することをお勧めします。 ■ 自主的な修正申告 万が一、申告内容の誤りに気付いた場合には、税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告を行うことで、加算税が軽減または免除される可能性があります。 税務調査官は多くの事例を把握しており、不適切な処理は高い確率で指摘されます。 会社を守る最も有効な手段は、小手先の対応ではなく、日頃から適切な会計処理と証拠書類の整備を徹底することです。 当事務所では、皆様が安心して本業に専念できるよう、日々の顧問業務を通じて税務リスクの未然防止に努めております。また、税務調査の際には、事前準備から調査立会い、事後対応まで含めて全力でサポートいたします。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2026.04.16 現金管理の重要性 『現金取引における税務調査リスクについて』 近年、商業分野のみならず行政サービスにおいてもキャッシュレス化が進み、口座振替やクレジットカード、QRコード決済など、多様な決済手段が普及しています。一方で、取引先の事情等により、依然として現金での取引が行われる場面も少なくありません。 例えば、飲食業をはじめとするサービス業では現金取引が多い傾向にありますが、こうした現金取引は税務調査上のリスクが高いとされています。これは、口座を介した取引と異なり、適切な管理が行われていない場合には取引履歴の把握が困難となるため、売上の計上漏れや改ざんがないことを客観的に証明しにくいことが主な要因です。 実際に税務調査を受けた際に帳簿への記載漏れ等を指摘されないためにも、管理マニュアルの整備や運用ルールの統一により、均一な管理体制を構築することが重要です。これにより、人的ミスの防止にもつながります。 また、現金管理が適切に行われていることを説明できる体制を整えておくことは、税務上のリスク低減に直結します。 税務調査においては、現金売上について、受領した現金の保管・管理方法を含めた一連の流れが確認され、現金管理の適正性や売上の過少計上の有無が調査されます。売上金は手元に滞留させず、速やかに口座へ入金するとともに、帳簿に詳細な記録を残しておくことが望まれます。 また、経費についても、現金で支払っている場合には、支払先の情報や支払日を帳簿で適切に管理しておくことが重要です。帳簿管理や領収書の保存が不十分な場合には、さらに詳細な調査に発展するケースも少なくありません。 結論として、現金取引については日々の管理を徹底し、リスク対策を講じておくことが重要です。これらの対応は、税務調査への備えにとどまらず、横領や盗難・紛失といった内部統制上のリスク対策としても有効です。具体的な管理方法や税務調査への対応については、税理士などの専門家へ早めに相談することをお勧めします。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2026.03.26 非居住者等に対する源泉徴収 『非居住者等から不動産を購入・賃借した場合の注意点』 昨今、非居住者または外国法人(以下「非居住者等」といいます。)が日本国内の不動産を保有するケースが増加しています。本稿では、こうした非居住者等から不動産を購入または賃借した場合の税務上の注意点について解説します。 国税庁が非居住者等への支払に関して注意喚起 国税庁は、2025年9月に非居住者等に支払う国内源泉所得に関するリーフレットを公表しています。非居住者等に対して何らかの支払を行う場合には、その対価が源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」に該当するかどうかを確認することが重要です。 (参考)非居住者等に対して支払う国内源泉所得に関するリーフレット https://www.nta.go.jp/publication/pamph/01.htm 支払者に源泉徴収義務および納税義務が発生 非居住者等に対して国内源泉所得を支払う者は、支払時に所得税および復興特別所得税を源泉徴収する義務があります。非居住者等から不動産を購入した場合や賃借した場合には、その対価が国内源泉所得に該当し、源泉徴収の対象となることがあります。源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、支払月の翌月10日までに納付する必要があります。 また、当初は国内の居住者から賃借していた不動産であっても、途中で譲渡等により所有者が非居住者等に変更されているケースもあるため、支払先の属性については定期的な確認が必要です。 非居住者等から不動産を「購入した場合」と「借りた場合」の源泉徴収の概要 1.購入した場合 対価の支払時に、所得税および復興特別所得税を10.21%で源泉徴収します。 ただし、以下のすべての要件を満たす場合には、源泉徴収は不要です。 • 買主が個人であること • 購入目的が自己または親族の居住用であること • 売買価格が1億円以下であること 2.借りた場合 賃借料の支払時に、所得税および復興特別所得税を20.42%で源泉徴収します。 ただし、以下の要件を満たす場合には、源泉徴収は不要です。 • 借主が個人であること • 当該不動産を自己または親族の居住用として使用すること なお、法人が社宅として賃借する場合や、個人であっても事務所等の事業用として賃借する場合には、源泉徴収義務が発生しますので、特に注意が必要です。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2026.02.05 令和8年度税制改正大綱 『中小企業・個人事業主に影響のある主な改正』 政府は、令和7年12月26日に「令和8年度税制改正大綱」を閣議決定しました。本コラムでは、大綱の内容のうち、令和8年中に施行開始予定で、特に中小企業や個人事業主に影響が見込まれる主な改正点についてご紹介します。 ■ 所得税関係 • 基礎控除および給与所得控除の引き上げ 基礎控除は104万円、給与所得控除は74万円へ引き上げ(所得制限あり) • 住宅ローン控除の延長および拡充 省エネ性能の高い中古住宅の借入限度額や控除期間の拡充、子育て世代への支援強化 • 通勤手当・食事代に係る非課税限度額の拡大 ■ 資産税関係 • 教育資金の一括贈与に係る非課税措置の廃止 • 貸付用不動産の評価方法の見直し 取得または新築から5年以内の貸付用不動産については、原則として購入価額またはそれに近い価額で評価 ■ 法人税関係 • 研究開発税制および設備投資促進税制の創設・拡充 • 少額減価償却資産の特例拡大 中小企業等が30万円未満の資産を一括経費処理できる特例について、上限額を40万円未満に引き上げ(年間限度額の300万円は変更なし) ■ 消費税関係 • インボイス制度における経過措置の見直し ※詳細は前号コラムをご参照ください。 今回の税制改正大綱では、物価高への対応や強い経済の実現を目的として、減税措置や各種経過措置の見直しなど、幅広い改正が盛り込まれています。前文の内容からは従来の志向から方向性の転換を図ろうとする姿勢がうかがえます。もっとも、衆議院解散総選挙の影響により、3月末までの成立・公布が困難な情勢ともいわれています。今回の選挙では税制改正の内容自体が大きな争点となっているわけではないため、大幅な内容変更の可能性は低いと考えられますが、現時点では不透明な状況である点には留意が必要です。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2026.01.16 令和8年度税制改正① 『インボイスに関する経過措置の見直しについて』 インボイス制度の導入から約2年が経過し、免税事業者から課税事業者へ転換した方の多くが、納付税額を売上税額の2割に抑える「2割特例」を活用しています。 この2割特例は令和8年分で終了予定とされていましたが、令和8年度税制改正大綱において、新たな緩和措置として「3割特例」の導入および制度の期間延長が盛り込まれました。 (1)「3割特例」の新設 現行の2割特例終了後、個人事業主を対象として、令和9年分および令和10年分の2年間、納付税額を売上税額の3割とする「3割特例」が新設されます。 • 2割特例(~令和8年分) 例)売上消費税100万円に対し、20万円を納税 • 3割特例(令和9年分~令和10年分) 例)売上消費税100万円に対し、30万円を納税 本改正は、特例終了後にいきなり本来の税負担へ戻すのではなく、段階的に引き上げることで、小規模事業者の経営に対する急激な影響を抑えることを目的としています。 なお、本特例は個人事業主に限定されているため、法人については従来どおり、令和8年9月30日を含む課税期間をもって特例が終了します。この点については特に注意が必要です。 (2)買い手側への経過措置も「後ろ倒し」 免税事業者からの仕入れについて、一定割合を仕入税額控除できる「経過措置」についても見直しが行われました。当初は、令和8年10月から控除率が80%から50%へ一気に引き下げられる予定でしたが、改正案では、その間に「70%控除」の期間が2年間新設されています。 • 令和8年9月末まで :80%控除 • 令和8年10月~令和10年9月末:70%控除(新設) • 令和10年10月~令和12年9月末:50%控除(後ろ倒し) • 令和12年10月~令和13年9月末:30%控除(後ろ倒し) これにより、免税事業者と取引を継続する買い手企業にとっても、コスト増加のペースが緩やかになることが見込まれます。 3割特例よりも、業種(小売業・卸売業など)によっては簡易課税制度の方が有利となるケースもあります。今回の特例内容やスケジュール変更を踏まえ、自社にとって最適な課税方式をシミュレーションすることが、これまで以上に重要となります。 当事務所では、今後も制度改正を踏まえながら、皆様が最も有利な選択を行えるよう、継続してサポートしてまいります。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2025.12.16 みなし解散について 『知らないうちに会社が消えてしまう?みなし解散のしくみ』 法務省では、毎年10月に休眠会社等の整理作業を行っています。通知を受けた法人で、現在も事業を廃止していない場合には、例年12月10日までに、管轄の登記所へ「事業を廃止していない旨」の届出を行う必要があります。 期日までに届出がなく、かつ必要な登記申請も行われていない場合には、同年12月11日付で解散したものとみなされ(いわゆる「みなし解散」)、法人税法上は解散の日から2か月以内に解散の申告手続きが必要となりますのでご注意ください。 対象となる法人とみなし解散までの流れ 〇対象法人となる法人 「株式会社」・・・ 最後の登記から12年以上更新されていない法人 「一般社団法人」「一般財団法人」・・・最後の登記から5年以上更新されていない法人 例年10月上旬に官報公告が行われ、管轄の登記所から対象法人に対し、公告が行われた旨の通知が送付されます。公告日から2か月以内に、役員変更等の必要な登記申請または事業を廃止していない旨の届出がなされない場合には、実際に事業を継続していたとしても解散したものとみなされ、職権による解散登記が行われてしまいます。 みなし解散が行われた場合の確定申告 みなし解散となった場合、12月11日が「解散の日」となります。このため、法人は事業年度開始の日から解散の日までを一事業年度(解散事業年度)とし、当該事業年度終了日の翌日から2か月以内に確定申告(解散申告)を行わなければなりません。 解散申告後の税務処理 〇清算を行う場合 残余財産が確定するまで清算事業年度ごとに清算申告を行う必要があります。 〇事業を継続する場合 みなし解散後3年以内であれば、「継続の登記」を行うことで会社を継続することが可能です。この場合、みなし解散の日の翌日から継続登記の日の前日までを一事業年度として確定申告を行います。なお、みなし解散から継続までの期間が1年を超える場合には、その間に清算事務年度が生じることとなります。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2025.11.20 令和7年度 年末調整 『特定親族特別控除の新設について』 今年も残すところ2ヶ月を切り、年末調整の時期となりました。例年多くの企業で従業員への案内や必要書類の収集などに追われ、担当者の方々が苦労される時期かと思います。その大きな要因の一つに、毎年の税制改正への対応があります。昨年は「定額減税」が新たに導入されたこともあり、例年以上に混乱を招いた年でした。 本年も、基礎控除の引き上げをはじめとする大きな改正が行われています。以前のコラムでは基礎控除額引き上げの概要を取り上げましたが、今回は新たに創設された「特定親族特別控除」について詳しくご説明いたします。 これまでの制度では、19歳以上23歳未満の子どもは「特定扶養親族」に該当し、年間63万円の控除が適用されていました。ただし、扶養される子どもの所得が48万円(給与収入で103万円)を超えると控除の対象外となるため、いわゆる「103万円の壁」を意識して就業時間を調整するケースが多く、社会的にも課題とされてきました。 今回の改正により、「特定扶養親族」の所得要件が48万円から58万円に引き上げられました。さらに、新設された「特定親族特別控除」により、所得が58万円を超えても85万円以下(給与収入で150万円)までは、これまでと同額の63万円の控除が受けられるようになりました。加えて、所得が85万円を超えた場合でも、123万円(給与収入で188万円)までは段階的に控除額が減額される仕組みが導入されており、配偶者控除・配偶者特別控除のような仕組みの柔軟な制度となっています。 この「特定親族特別控除」を受けるためには、扶養される親族が以下のすべての要件を満たしている必要があります。また、親族同士で相互にこの控除を適用したり、すでに本控除を受けている親族を「特定扶養親族」として重複適用することはできません。 • 居住者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族であること • 合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入で123万円超188万円以下)であること • 配偶者、青色事業専従者、または白色事業専従者でないこと 今回の改正は、子どもを扶養する世帯にとって手取り額の増加につながる前向きな内容といえます。ただし、所得要件や控除の計算方法など、制度の運用には複雑な部分も多く見られます。適用漏れや誤りを防ぐためにも、ぜひ税理士などの専門家にご相談ください。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2025.10.15 税務調査のしくみ 『税務調査とKSKシステムについて』 税務調査とは、納税者が提出した申告内容が正しいかどうかを確認するために行われる調査のことです。経営者や事業主にとって、できれば避けたいものの代表格といえるでしょう。法人・個人事業主を対象とする税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。このうち、強制調査は巨額な脱税など悪質な不正が疑われる場合に、国税局査察部(いわゆるマルサ)が強制的に行うもので、非常に特殊なケースであるため、ここでは任意調査に焦点を当てます。 任意調査は税務署の管轄で実施され、特定の疑惑がある企業だけでなく、ランダムに選ばれるケースもあります。一般的には事前に電話で調査の連絡があり、日程調整を経て1〜3日程度で行われます。税務調査が行われる頻度には一定の周期があるわけではなく、3〜5年ごとに対象になる場合もあれば、10年以上調査が行われないこともあります。対象選定には、個人・法人の区分、売上や所得の規模、消費税の課税の有無、業種・業態など、さまざまな要素が関係しているといわれています。 調査対象を選定する際には、過去の申告書や決算書などの情報が活用されますが、その際に重要な役割を果たすのがKSKシステム(国税総合管理システム)です。このシステムには個人・法人を問わず税金に関する申告や納税情報が記録され、全国の国税局や税務署で共有されています。申告内容に不自然な数値があれば、KSKシステムが異常値として検出し、調査の優先度を判断する材料となります。 さらに令和5年からは、AIによる申告漏れの分析が本格的に活用され始めました。AIが過去の事例を学習することで申告漏れの可能性が高い属性を特定し、重点的な調査が行われています。その結果、1件当たりの追徴税額は毎年過去最高を更新しており、税務調査の精度と効率は年々向上しています。令和8年9月には、新システム「KSK2」の運用開始も予定されています。現行との大きな違いは、書面からデータへの完全移行、税目の横断的な一元管理、そして調査官が外出先からでもアクセスできる点です。これにより、税務調査はより綿密で深度もますます深まるものと見込まれます。 こうした流れを踏まえると、納税者にとっては、日々のバックオフィス業務の質の向上と、適正な申告書・決算書の作成がますます重要になります。加えて、税務の専門家である税理士と密に連携し、事前にリスクを把握・対策しておくことが、安心して事業を継続するための最善策といえるでしょう。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)
2025.09.08 消費税の留意点② 『インボイス制度の2割特例の終了について』 令和5年10月1日から開始された消費税のインボイス制度には、制度導入に伴う急激な消費税負担を緩和するために「2割特例」という負担軽減措置が設けられました。実はこの特例は令和8年9月30日をもって終了することをご存じでしょうか。 今回は、2割特例の概要と、その終了後に想定される影響について解説します。 インボイス制度とは 仕入や経費の支払いに際して、インボイス(適格請求書)が発行されていることにより、売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を控除できる制度です。 インボイス制度に登録すると、それまで消費税の免税事業者であった事業者も課税事業者となり、消費税の申告・納付義務が生じます。 2割特例とは インボイス制度の導入を機に免税事業者から課税事業者となった場合、売上にかかる消費税額の20%のみを納付すればよいという期間限定の特例措置です。この特例が適用できるのは令和8年9月30日までに属する各課税期間に限られます。したがって、令和8年10月1日以降に開始する課税期間については、2割特例を利用することはできません。 2割特例終了後に想定される影響 ① 納税額の増加 消費税は「売上にかかる消費税 - 仕入にかかる消費税」で計算されます。そのため、仕入や経費が少ない場合には、2割特例終了後に 納税額が大幅に増加する可能性 があります。 ② 取引先との関係への影響 仕入先がインボイスを発行していない場合、その仕入にかかる消費税を控除できず、自社の納税額が増えることになります。結果として、免税事業者との取引を継続するか、見直すかという判断をより強く迫られる可能性があります。 まとめ このように、2割特例の終了は単なる納税額の増加にとどまらず、日々の経理業務や資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。したがって、早めに状況を把握し、対応を検討しておくことが重要です。 なお、対象期間中であっても一定の要件に該当する場合は2割特例が適用されないことがあります。また、特例終了後に選択する課税方式によっても納税額は大きく異なります。制度は複雑なため、具体的な対応については専門家へご相談されることをお勧めいたします。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)