2025.06.14 令和7年度税制改正② 『所得税の基礎控除等の見直しについて』 昨秋の衆議院選挙以来、話題となっていた「103万円の壁」、すなわち所得税の基礎控除・給与所得控除の見直しについて、令和7年度税制改正法が本年3月31日に可決・成立したことで、最終的な決着がつきました。期待されていた「壁の引き上げ額」が178万円に届くことはありませんでしたが、一定の引き上げが実現しました。 (1)所得制限付きで103万円から160万円に引き上げ 今回の改正では、基礎控除が48万円から95万円に、給与所得控除が55万円から65万円に引き上げられ、いわゆる「103万円の壁」は160万円まで引き上げられることになりました。 ただし、年収が160万円を超えると、基礎控除額は95万円から58万円に減少しますので注意が必要です。限定措置として、令和7年から8年にかけては、合計所得金額に応じて「95万円・88万円・68万円・63万円・58万円」の5段階で基礎控除額が逓減するしくみとなりました。 (2)特定親族特別控除の創設 この制度は、19歳から22歳までの大学生相当の子どもを持つ家庭の負担軽減を目的としたもので、年末の「働き控え問題」への対応として新設されました。 現行の特定扶養控除(年収上限103万円)に加えて活用でき、控除の対象となる年収上限は150万円と大幅に引き上げられています。控除額は最大63万円で、年収が150万円を超えても188万円までの範囲で、63万円から3万円まで段階的に控除を受けることが可能です。 (3)配偶者控除の上限が103万円から123万円に 配偶者を扶養する世帯の税負担を軽減する配偶者控除も見直され、対象となる配偶者の年収上限は103万円から123万円に引き上げられました。 123万円を超えると配偶者特別控除の対象となりますが、年収が160万円までであれば、配偶者控除と同額の38万円の控除が受けられます。さらに、年収が160万円を超えても約201万円までの範囲で、控除額は「38万円・26万円・13万円」と段階的に減少しながらも控除が適用されます。 今回の改正により、いわゆる「103万円の壁」が引き上げられ、学生やパート・アルバイトとして働く配偶者などの働き控え問題の一定の解消が図られました。 とはいえ、所得制限が設けられていることから、手取りの増加効果には限界があります。今後は、所得制限の緩和や社会保険などの他の壁の見直しなど、さらなる改正が期待されます。 (※本記事の内容は、作成日時点における法令および関連規則等に基づいて記載しています。)