2025.10.15 税務調査のしくみ 『税務調査とKSKシステムについて』 税務調査とは、納税者が提出した申告内容が正しいかどうかを確認するために行われる調査のことです。経営者や事業主にとって、できれば避けたいものの代表格といえるでしょう。法人・個人事業主を対象とする税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。このうち、強制調査は巨額な脱税など悪質な不正が疑われる場合に、国税局査察部(いわゆるマルサ)が強制的に行うもので、非常に特殊なケースであるため、ここでは任意調査に焦点を当てます。 任意調査は税務署の管轄で実施され、特定の疑惑がある企業だけでなく、ランダムに選ばれるケースもあります。一般的には事前に電話で調査の連絡があり、日程調整を経て1〜3日程度で行われます。税務調査が行われる頻度には一定の周期があるわけではなく、3〜5年ごとに対象になる場合もあれば、10年以上調査が行われないこともあります。対象選定には、個人・法人の区分、売上や所得の規模、消費税の課税の有無、業種・業態など、さまざまな要素が関係しているといわれています。 調査対象を選定する際には、過去の申告書や決算書などの情報が活用されますが、その際に重要な役割を果たすのがKSKシステム(国税総合管理システム)です。このシステムには個人・法人を問わず税金に関する申告や納税情報が記録され、全国の国税局や税務署で共有されています。申告内容に不自然な数値があれば、KSKシステムが異常値として検出し、調査の優先度を判断する材料となります。 さらに令和5年からは、AIによる申告漏れの分析が本格的に活用され始めました。AIが過去の事例を学習することで申告漏れの可能性が高い属性を特定し、重点的な調査が行われています。その結果、1件当たりの追徴税額は毎年過去最高を更新しており、税務調査の精度と効率は年々向上しています。令和8年9月には、新システム「KSK2」の運用開始も予定されています。現行との大きな違いは、書面からデータへの完全移行、税目の横断的な一元管理、そして調査官が外出先からでもアクセスできる点です。これにより、税務調査はより綿密で深度もますます深まるものと見込まれます。 こうした流れを踏まえると、納税者にとっては、日々のバックオフィス業務の質の向上と、適正な申告書・決算書の作成がますます重要になります。加えて、税務の専門家である税理士と密に連携し、事前にリスクを把握・対策しておくことが、安心して事業を継続するための最善策といえるでしょう。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)