2023.07.06 税務上の給与と外注費の違いについて 『総合勘案による判断 』 一般的に給与と外注費の区分は「給与は雇用契約」「外注費は請負契約又は委任契約」といった契約の形態で判断していると思います。また、支払者側からすると給与ではなく外注費にすることで、消費税の仕入税額控除の適用や社会保険料の会社負担分がかからないなどのメリットがあるため、実際には雇用契約に近い状況でも、外注として契約するケースも散見されます。 税務上では外注費に関する明確な定義はなく、給与と外注費の区分は以下のような基準にしたがって総合勘案して判断することとされています。 ① 代替性の有無 ・・・他人が代替して業務を遂行することが可能かどうか (可能な場合は外注費として判断される可能性が高くなります) ② 拘束性の有無 ・・・作業時間の指定や報酬が時間を単位として計算されるなど時間的拘束があるか (時間的拘束がある場合は給与として判断される可能性が高くなります) ③ 指揮監督の有無 ・・・仕事の遂行に当たり個々の作業について指揮監督を受けるか (指揮監督を受ける場合は給与として判断される可能性が高くなります) ④ 報酬請求権の有無 ・・・引渡しを完了していない完成品が不可抗力のため滅失した場合等において、既に遂行した業務又は役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか (請求できる場合は外注費として判断される可能性が高くなります) ⑤ 材料・用具等の供与有無 ・・・材料や作業用具等が提供されているか (提供されている場合は給与として判断される可能性が高くなります) 上記の基準にしたがって実態を総合勘案で判断することとなりますので、どれかひとつが当てはまるからといってすぐに給与・外注費と区分できるものではありません。また、業界的な慣習なども考慮したうえで、総合的に見て実質的にはどちらに該当するかを判断することとなります。 したがって、仮に契約書上で請負や委任契約と定めていても、事実に基づいて総合勘案されるため、実態が雇用契約と同様な働き方であれば外注費として認められません。 そして、税務調査において外注費が給与とされると、源泉所得税の徴収漏れの指摘とともに消費税の仕入税額控除が否認されます。また、後から源泉所得税を支払先から徴収するのは容易ではないため、最終的には会社が全て負担することとなってしまうことが多いです。 外注費を否認されないためには、上記の判断基準のうち雇用契約と同視されるおそれのある内容を出来るだけ改善する必要があります。また、実態で判断するとはいえ、契約書や請求書等をしっかり整備しておくことも非常に重要です。 今回の論点だけではなく、税務上では事実に基づいて判断するケースが多く、その判断が難しいものも多くありますのでご注意ください。 (記事の内容は作成日現在の法令・関係規則等をもとに作成しております。)